京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

「からだ力」を高める治療法により症状が安定した肺がんの女性(63歳)

    今日は、抗がん剤(分子標的薬イレッサ)の量を減らしながら、
    自然食などで体調を改善した肺がんの患者さんの症例について説明します。

    少量の抗がん剤以外は、サプリメントや自然食などのシンプルな治療法だけで
    元気に生活しています。



    この患者さんは6年前に肺がんのステージ1Aの段階で手術を行ったものの、
    その後再発し、2回再手術を受けている人です。

    手術の後は分子標的薬(抗がん剤の一種)のイレッサを毎日服用しましたが、
    副作用が強かったため服用を週に3回にし、体質改善をはかる方向で治療をすすめました。
    現在はほぼ再発のおそれがなく、安定した体調です。

    分子標的薬であるイレッサは、効く症例と効かない症例があるのですが、
    女性の腺がんでたばこを吸っていない人の場合には効果が期待できます。
    この患者さんには効果が期待できたので服用することにしたのですが、
    イレッサの副作用として知られる間質性肺炎を恐れたため、
    毎日服用せず1日置きに飲むことにしました。

    通常イレッサは1、2年で効かなくなるのですが、
    この患者さんの場合は服用をはじめて4年経ってもいまだに効いています。
    これは、効果が期待できる最低限の量を服用しているということと、
    高い「からだ力」を保っているおかげだといえるでしょう。

    この患者さんの血液を調べてみると、好中球の数が2705個でリンパ球数が2268個、
    好中球とリンパ球の比率が1.2、炎症の指標となるCRP値は0.06と、
    ほぼ安全なパターンを示しています。

    これは「からだ力」が向上したことでがんがおとなしくなっている典型的な数字です。

    またこの患者さんの血液を見てみると、
    悪玉コレステロールと善玉コレステロールの比率は1.1(悪玉81、善玉75)となっており
    非常に血管の状態が良好なことが分かります。

    現在は、ビタミンを含んだ新鮮な野菜と果物をたくさん食べ、
    玄米などの自然食を食べるようすすめています。
    この患者さんの免疫力は非常に向上しましたが、
    免疫賦活療法などの高額な治療は受けていません。

    行った治療法は、免疫力を高めるためのベータグルカンのサプリメント
    週3回のイレッサ服用、そして食事指導と雲南イチイの木のお茶だけです。
    そのようにシンプルな治療によって高いレベルの「からだ力」を維持することができるという
    よい症例だと思います。

    現在この患者さんの体調は非常に落ち着いていますが、
    かつて母親が危篤に陥ったときは一時的に体調が悪くなりました。
    これを見ても、がんとストレスには強い相関関係があるということが分かります。