京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

外科手術と化学療法。どちらを選ぶべきか

    がん患者さんの中には、手術をせずなるべく
    抗がん剤で治療を行いたいという人もいます。

    しかし手術と抗がん剤とでは、受け持つ役割がまるで違うのです。

    現在、がんの切除手術で期待される効果は、
    がんという体内の炎症の塊(つまりこれがエントロピーです)
    外科手術によって取り除くことで体内のバランスが整い、
    その結果、免疫力を向上させることです。

    しかし、手術をすればすべてのがん細胞を取り除くことが
    できるというわけでもありません。
    相当早期のがんでない限り、外科手術が成功したとしても、
    微小ながん細胞の取り残しはあると考えたほうがいいでしょう。

    その取り残しのがん細胞の活動を抑えるということが
    私が抗がん剤に期待する役割です。

    「抑える」と書いているのは、がん細胞のはたらきをおとなしくさせ、
    細胞が増殖するメカニズムを止めるだけだからです。

    実は抗がん剤を使う場合は、もう少し腫瘍が大きくなっていても
    効果は期待できるのですが、
    すべてのがん細胞が抗がん剤によって退縮するわけではなく、
    生き残る細胞もあります。

    問題は、生き残ったがん細胞は
    その抗がん剤に対して耐性を持ってしまうということです。


    抗がん剤という毒物を乗り越えて生き残った細胞ですから、
    強い生命力を持ったがん細胞です。

    このがん細胞を抑えこむためには、
    もっと強い抗がん剤が必要になってしまいます。
    このように、抗がん剤によるがん治療は、
    がんと抗がん剤のイタチごっこになる可能性があるのです。

    だから私は、がん細胞を「撲滅しよう」とするのではなく、
    がん細胞のはたらきを抑える程度のゆるやかな形で
    抗がん剤を使用することをすすめています。

    ゆるやかな形での抗がん剤使用とは、
    ごく少量を長期間に分かって使うという方法です。
    この使い方であれば、免疫系はあまり
    ダメージを受けることがありません。


    がんは、免疫不全による病だということもできます。
    免疫のはたらきを健全に保つことは、
    がん治療においてきわめて大切なポイントだといえるでしょう。