京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

糖尿病になるとがんリスクが高まるわけ

    ◆ がんは炎症のかたまり


    がんを引き起こすエントロピーで、体内に蓄積したエントロピーによって
    体が酸化すると説明しました。

    体が酸化するということは、つまり炎症状態になることです。
    そして、がんこそが炎症の塊なのです。

    実は炎症は、末期がんだけでなく早期がんでも見られる徴候です。
    体内で炎症状態が進行しているかどうかが、
    がんが進行したり再発したときのシグナルになります。

    エントロピーが溜まっている体では、
    がんを引き起こすもとになる活性酸素が大量に発生しています。
    がん対策においては、すでに体内にある慢性炎症を
    取り除くことがきわめて重要です。


    ◆ 糖尿病とがんの相関関係


    炎症と関係がある病気はがんだけではありません。

    実は糖尿病の人も肥満の人も、
    体の中に慢性炎症を持っていると思ったほうがいいのです。

    生活習慣病を持っていると、がんという観点から見ても
    非常に危険だということを、よく認識しておきたいです。

    糖尿病を例にあげてみましょう。

    最近、糖尿病と悪性腫瘍とが密接に関連しているということが
    明らかにされつつあります。


    糖尿病により発生率が有意に上昇するとされる悪性腫瘍として、
    すい臓がん、大腸がん、肝臓がん、前立腺がん、乳がん
    子宮がん、胃がんがあります。
    以前から日本に多かった胃がん以外はすべて
    近年増加しているがんです。

    肺がんの報告がないのは、肺がんに及ぼす喫煙の影響が
    大きいためと考えられます。

    糖尿病歴がある男性とない男性とを比べてみると、
    糖尿病のある男性はがんのリスクが27%も高くなっています。
    肝臓がんに限定すると、実に2.24倍になることがわかっています。

    女性の場合も、糖尿病患者さんの胃がん発病率が1.61倍、
    肝臓がんが1.94倍など、有意に高くなっていることが目立ちます。

    どうして糖尿病になるとがんリスクが高まるのでしょう。

    糖尿病になると血中のブドウ糖が増えますが、
    これが悪さをするのです。

    ブドウ糖と体内のタンパク質が反応すると
    HbA1cという物質ができます。
    このHbA1cを放置しておくと、体内で反応を繰り返し、
    最終的にはAGE(糖代謝最終産物)と呼ばれる物質が産生されます。

    恐ろしいことにAGEは、ノンアルコール性の脂肪肝
    認知症のもととなるアルツハイマー病、血管障害、
    悪性腫瘍、高血圧といった病気が引き起こすもととなります。


    ◆ 糖尿病はコントロールできる



    AGEの産生を防ぐことが、
    いかに重要かということが分かっていただけたかと思います。


    現在の糖尿病治療は、投薬などによって
    インシュリンの分泌を促す治療法が主となっていますが、
    より望ましいのは、弱った膵臓ランゲルハンス島細胞を、
    正しく作用・機能する健康な状態の細胞に戻すアプローチだと思います。

    ビタミンCが欠乏するとランゲルハンス島が変性します。
    糖尿の人はビタミンCを大量に摂取するようにしてください。
    またビタミンEやレシチンがよいということも知られています。

    同時に、体をインシュリンが効きやすい状態に
    持っていくことも重要です。


    インシュリンのはたらきを高めてくれる物質として、
    GTF(ブドウ糖耐性因子)があります。
    GTFの生成には、三価クロムやアミノ酸
    ビタミンB3などが必要になります。

    これらの栄養素は、ビール酵母、未生成の穀類、
    えび、きのこ類などに多く含まれています。
    食事を通してGTFを増やすことは可能です。

    このように考えてみると、
    炎症体質の改善にはビタミン類の摂取が
    欠かせないということが分かります。

    とくにビタミンCを大量に取ることは重要です。

    体を酸化させない食生活を意識することで、
    糖尿病はかなりコントロールできるのではないでしょうか。

    そのような食生活は、がんの予防にも大いに役立つはずです。

    >> 糖尿病のKさんの体験談です
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