京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

がん体質の目安となるCRP

    ◆ 血液検査でがん体質がわかる




    がんが住みやすい体質が分かる「からだ力」で、
    がんが住みやすい体質になっているかどうか
    分かる指標を説明しました。

    血液中の好中球とリンパ球の比率と、
    炎症反応であるCRP値というふたつの数値によって、
    がんになりにくい体質かどうかが推測できるのです。


    血液検査をすれば、がんになりにくい体質かどうかが分かります。
    定期的な血液検査でこれらの指標を見ていけば、
    体がどのような状態になっているかが見えてくるのです。

    CRPはがんが暴れているときに上昇


    今回は、炎症反応であるCRP値について説明します。

    CRPは、Cリアクティブ・プロテイン(C炎症性蛋白)という意味で、
    体の中で炎症が起きているとき、血液中に表れる物質です。
    炎症が激しいほど、CRPの値が大きくなります。

    いわゆる「がん体質」は、がんが住みやすい状態になっている
    炎症体質ということができます。

    たとえば末期のがん患者さんが亡くなる直前には、
    CRP値が急激に上昇します。
    これは体内で活性酸素が大量に発生している
    ということを意味します。

    がん細胞は、サイトカインという物質を出して血液を集め、
    成長のための栄養にします。
    このとき血液中の好中球が活性酸素を出すのです。
    がんの末期になると、体中に活性酸素が大量に発生している
    という状態になってます。

    ◆ がん末期のCRP


    アスベストによる胸膜中皮腫で亡くなった
    患者さんを例にとってみます。
    この患者さんが亡くなる三週間ほど前のCRP値は
    22.99まで上昇していました。

    肺がんで亡くなる直前の血液検査でCRP値が
    12.24となった患者さんもいます。
    この患者さんは、その一週間ほど前にも血液検査をしていますが、
    その時点では6.62でした。

    がん末期になると急激にCRP値が上昇するのです。
    このとき体内は、激しい炎症状態となっています。

    ちなみに健康な人の場合、CRP値の目安は0.05以下です。
    体内に炎症がない場合は、0.01や0.02程度まで下がります。
    ところががんになると、この数値がてきめんに
    0.1程度まで上がるのです。

    ◆ このような場合は精密検査を


    もちろん、けがなどをして体に炎症があれば、
    一時的にCRP値が上がりますが、炎症が鎮まれば下がります。
    いつまでもCRP値が高いままであれば、
    何か問題があるかもしれないと考えて、
    精密検査を受けたほうがよいでしょう。

    このCRP値の変化の推移は、
    がんの手術を受けて体が落ち着いてきたときなどの、
    がん治療中にもきわめて重要です。

    いつまでもCRP値が下がらないようであれば、
    再発している可能性を疑わなくてはならないということは
    覚えておきたいものです。