京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

検診でステージ1Bの肺がんが発見されたKさんの声(1)

    Kさんは、市の検診でステージ1Bの肺がんが見つかりました。
    勉強熱心な翻訳家のKさんは、
    がんの治療法や積極的な心構えなど、
    がんが見つかっても落ち込むことなく、
    前向きに治療に取り組んでいます。

    >> >> Kさんからの声の後半はこちらになります。
    >> >> Kさんの血液データなどの症例はこちらになります。

    ◆ 肉が好きで野菜はあまり食べませんでした


    現在61歳で、肺がんが見つかったときは54歳でした。
    あれからもう7年になります。
    がんになる前の食生活は、お肉が好き、
    とくに鶏の唐揚げが大好きでした。

    お野菜や果物はあまり食べませんでした。
    豆腐や野菜はお腹が張って苦しくなる気がしたので。
    お酒は飲みません。

    ◆ 自分が肺がんになるはずはない


    肺がんが見つかったきっかけは検診でした。
    住民検診でがんが発見される人は少ないと聞いていたので、
    ずっと集団検診はあてにならないと思っていました。
    X線も毎年受けたことがなく、
    血液検査と尿検査しかしていませんでした。

    私はたばこを吸わないので、
    肺がんになることは ないと思っていたのです。

    本当はそうではなく、私のケースである肺野部のがんは
    たばこを吸わない人にできるがんだそうです。
    夫はたばこを吸っており、
    結婚した当初はヘビースモーカーでした。

    ◆ 友人に連れられて“たまたま”受けた検診


    そのときに限って友人に誘われて健康診断に行きました。
    がん検診を受ける友人にくっついて、
    ついでに受けてみたのです。

    彼女といっしょでなければがん検診は受けませんでした。
    それで見つかったのだから、とてもラッキーでした。

    結果は要精密検査、X線の再検査ということでした。
    そこで近所の病院で再度X線の検査を受けたところ、
    問題ないということでした。

    実は小さく光るものが写っていたのですが、
    これはミスだと言われたのです。
    どうしても心配なら3ヶ月後に来ればいいと言われました。
    しかし心の中で「大丈夫ではない」と言っている声が聞こえました。

    ◆ 「ただことではない」という心の声


    どうしても納得できなかったので、
    もうひとつの病院に行くことに決め、
    すぐに向かいました。

    実はその病院には数年前のレントゲンの記録があったので、
    比較してもらおうと考えたのです。
    そこではレントゲンだけでなく、CTも受けました。

    がんの検査は気持ちのいいものではありませんが
    懸案事項は早く片付けたかったので、
    どんどん行動したんです。

    問題がなければそれで解決するわけですから…。
    しかし、ただことではないと心の声が叫んでいたことは事実です。

    ◆ やはり肺がんだったと分かる


    しばらくして結果を聞きに行ったところ、
    いつもは辛口な先生が、すごく気の毒そうだったのが
    印象に残っています。
    1期のBで3センチくらいあったため、
    転移の可能性も考えていたのかもしれません。

    別の病院の紹介状を書いてもらうことになったとき、
    仕事仲間の父親が肺がんの専門医だと
    聞いていたことを思い出し、
    和田先生に診てもらうことに決めました。
    その話を聞いたのが数日前でしたから、すごい縁だったと思います。

    ◆ より動揺したのは夫


    すぐに京大病院に行き、和田先生に見てもらいました。
    肺がんはすぐ分かり、手術を受けることになりました。
    転移があるかもしれないのでPETを受けるようにとも言われました。
    はじめて見てもらったとき、
    1期のBなので転移さえなければなんとかなるでしょう、大丈夫!
    と言われたことを覚えています。すごくほっとしました。

    私よりも、一緒に行った夫のほうがもっと安心していました。
    がんが見つかって以来夫はずっと沈痛な様子だったのですが、
    先生の言葉を聞いて落ち着いたようでした。

    当時飼っていた犬の容態も悪かったため、
    私と犬が両方死ぬかもしれない、と悩んでいたようです。
    でも先生が「大丈夫ですよ」と言ったのを聞いてから、
    いつもの夫に戻っていました。

    和田先生の言葉には安心感がありました。
    先生は励ますために大丈夫と言ったのだと思うのですが、
    それがオーラというかなんというか、
    先生の気持ちのようなものがこちらに伝わってきて
    私だけではなく夫も元気になっていたのです。


    わたし自身はがんの宣告を受けて落ち込むタイプではありません。
    ネットで調べたり、本を読んだり、
    できることはいろいろありますから。

    先生のホームページで情報を集め、
    最悪でも5年は生きられる…と自分を支えていました。

    ◆ 入院生活で誰かの役に立てる喜び


    手術はすぐに行われ、肺の上部すべてとリンパを取りました。
    右肺は3つに分かれているので、取る量が少ないけれど、
    左肺は2つに分かれているので大きく失います。
    切除後も生活に支障が出ることはほとんどありませんが、
    呼吸はときどき苦しくなります。

    手術前は手術がこわくて落ち着きませんでしたが、
    手術さえ終わればあとはよくなる一方と思っているので、
    精神的には過ごしやすかったです。
    だからあまり入院は怖くありませんでした。

    入院生活も楽しかったです。
    病室では自分が一番軽かったので、
    病状が重い人のためにお役に立つことができました。
    人に役に立っているということがすごく幸せだったのです。


    病院は行きたくない場所ではあるけれど、
    自分の役割を再認識できるところでもありました。
    ひとりじゃないというだけでだいぶ違いますね。
    一人で苦しんでいるわけじゃない、
    と思うだけでがんばれます、連帯感もあります。


    ◆ まだやることはあるはず


    退院後は、毎月CTなどの検診を受けながら家で過ごしていました。
    本やネットで情報収集は続けました。
    知識欲が旺盛なので、たとえば腸が大事と聞いたら
    腸のマッサージに行くなどして、
    食事に気をつけながら体にいいことをしていました。

    入院中に、浅見帆帆子さんの「あなたは絶対!運がいい」
    という本を読んでいたので、
    プラス思考を心がけたということはあります。


    あなたは絶対!運がいい

    がんが見つかり手術するまでのプロセスひとつひとつで、
    自分はラッキーだと思えることがありました。

    病気がきっかけで浅見さんの本に出会えたということも、
    きっと私はまだ死なないということなのだろうと思っていました。

    ◆ ふたたび肺がんが見つかる


    これだけラッキーなできごとに恵まれているということは、
    神様からやることがあると言われているのだと思っていた
    ので、
    1年3ヶ月後に検診で、ふたたび肺にがんが見つかったときは
    本当にショックでした。

    和田先生の意見では、こんなに小さながんは再発とは
    いえないということでしたが、
    PETを受けたところ光っていたので、
    放射線のピンポイントで焼きました。

    そのとき思ったのは、いろいろ自分で気をつけた
    つもりだったけど足りなかったのかもしれないということです。
    それからはもっと健康に気をつけ、
    精神面でもポジティブになるよう心がけました。




    >> 検診でステージ1Bの肺がんが発見されたKさんの声(2)に続きます。

    >> >> Kさんからの声の後半はこちらになります。
    >> >> Kさんの血液データなどの症例はこちらになります。