京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

体内に蓄積するエントロピー

    ◆ 漏れ出てしまった活性酸素


    原始地球に生まれた生命体は、
    硫化水素をエネルギーとして生きていました。
    ところがある時点で、酸素をエネルギーとする
    生命体が生まれたのです。


    酸素を使うことで、
    効率よくエネルギーを生成することができ、
    結果として生物は大きな体を
    つくることができるようになったのですが、
    問題もありました。

    われわれもまた、
    酸素を使って生きるためのエネルギーを
    作っているのですが、
    酸素を呼吸することで必然的に
    体内に活性酸素が蓄積していく
    ことになります。

    この活性酸素こそが、
    がんを引き起こすきっかけともなるエントロピーなのです。

    空気中にある酸素を活性酸素に変えて、
    体内でエネルギーを作る過程で、
    どうしてもエネルギーに変換することができず、
    漏れ出てしまう活性酸素があります。

    漏れ出てしまったこの活性酸素を、
    私はシュレーディンガーの概念を用いて、
    エントロピーと呼んでいます。

    生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

    生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)



    ◆ 毒性の高い活性酸素 ヒドロキシルラジカル


    活性酸素の大きな問題は、
    さまざまなものに反応するということです。

    活性酸素にもさまざまな種類があるのですが、
    最も危険な活性酸素
    ヒドロキシルラジカルと呼ばれるものです。


    ミトコンドリアの中で行われている
    酸化反応の近くにわずかでも鉄(金属)があると、
    活性酸素攻撃性の強いヒドロキシルラジカルに変わります。

    ヒドロキシルラジカルは何十億分の一秒という速さで
    近くのものと結合してしまい、その物質を変成させるのです。

    遺伝子、たんぱく質、脂質などすべての細胞成分が、
    ヒドロキシルラジカルによって化学反応を起こし変成することで、
    機能障害が引き起こされます。

    ヒドロキシルラジカルが強い攻撃性を持つといわれる理由は、
    反応の速度が速く反応性が高いためです。

    放射線やX線、抗がん剤なども
    ヒドロキシルラジカルを発生します。

    たとえば放射線を少量浴びる程度であれば
    生命に危機を及ぼしませんが、
    大量に浴びると死んでしまうというのは
    このような理由によります。

    ◆ 体の酸化を抑えるには


    酸化という形で体内に蓄積した
    エントロピーの上昇を抑える方法としては、
    まず、抗酸化物質を摂取すればよいでしょう。

    抗酸化物質を多く摂取すると酸化を食い止めることができ、
    体内の酸化ストレスが減少します。

    これによってエントロピーの増加を
    抑えることができるのです。

    抗酸化物質にはビタミンC、ビタミンE、リコピン
    フラボノイド、ポリフェノールなど
    さまざまな種類がありますが、
    主として食物で摂ることになります。

    抗酸化物質の摂取だけでは、
    いったん体内に蓄積したエントロピーそのものを
    下げることは難しい
    でしょう。

    体内に溜まったエントロピーを下げるには、
    デトックス(毒素排出)しかないのです。

    エントロピーを下げるデトックスについては、
    次回に説明します。

    活性酸素が体内でどのような働きをしているかは
    このような本が参考になります。

    活性酸素の話―病気や老化とどうかかわるか (ブルーバックス)

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    生命にとって酸素とは何か―生命を支える中心物質の働きを探る (ブルーバックス)

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