京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

エントロピーとデトックス

    ◆ 溜り続けるエントロピー


    酸素を呼吸して生きるためのエネルギーを作っている私たちは、
    体を錆びさせ、老化や細胞のがん化を引き起こすきっかけとなる
    活性酸素が体内に生まれることを避けられません。

      これは、酸素という効率のいい物質を用いたことの
    宿命ともいえるものです。

    いわば酸素をエネルギーに用いた際にできる
    産業廃棄物のような活性酸素が体内に蓄積していくのです。

    この産業廃棄物のようなものが、
    前回説明したエントロピーです。

    がんを防ぎ、がんが住みにくい体質を作るためには、
    エントロピーをいかに減らし、
    蓄積しないようにするかが肝となります。


    エントロピーを排出するデトックス


    そのために欠かせないのがデトックスです。

    体内の有毒物質を排出する「排泄」行為には、
    便と尿と汗と呼吸しかありませんが、
    もっとも毒素を大量に排泄することができるのが排便です。

    実に、体内に溜まった毒素の7割以上
    大便という形で排泄されるといわれています。

    ここで非常に重要になってくるのが
    腸内フローラと呼ばれる腸内の細菌叢の状態です。

    尿や汗の量や状態をコントロールすることは
    なかなか難しいですが、
    腸内環境を整えることによって、
    便をよりよい状態に変化させる
    ことは、
    努力次第で可能でしょう。

    著書『生命とは何か』の中でシュレーディンガーは、
    「物質代謝の本質は、生物体が生きているときには
    どうしても作り出さざるをえないエントロピー
    全部うまい具合に外へ棄てるということにあります」

    と書いています。

    生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)


    生きている限りエントロピーが溜まってしまうことは
    避けられませんが、できるだけ質のいい食べ物、
    つまり酸化を遅らせる「抗酸化物質」を取ること、
    そしてそれでもなおかつ溜まってしまう
    エントロピーをうまく排泄する知恵
    必要になってくるでしょう。

    エントロピーの蓄積は避けられない


    ミトコンドリア内では常に活性酸素が発生しているが、
    必ずそのうちの数パーセント(一説では5‐8%)
    ミトコンドリアの外に漏れています。

    活性酸素ミトコンドリア内部にあるうちは
    エネルギー生成に役立っていますが、
    外部に漏れると脂質やタンパク質などが反応を受け、
    酸化・変成してしまいます。

    このことが老化やがん化に繋がってくるのです。

    生きている限り、「がん体質」に近づいてゆくことは避けられません。