『活性酸素の話』 永田親義
- 作者: 永田親義
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/09/20
- メディア: 新書
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活性酸素の話―病気や老化とどうかかわるか (ブルーバックス)
◆ 活性酸素からは逃れられない
体内に蓄積するエントロピー、
エントロピーとデトックスで説明してきたように、
私たちの体内に生まれる活性酸素は、
いわば産業廃棄物のようなものだと考えてよいでしょう。
これは、太古の生命体が
酸素という効率的な物質を使って生きるためのエネルギーを生成
することを選んだ結果の宿命とも言えます。
◆ 『活性酸素の話 病気や老化とどうかかわるか』
活性酸素ががんの発生と深く関わっているということは、
このブログで何度か説明してきました。
「がんになりにくい体質づくり」のためには
活性酸素とはどのようなものなのか、
体内でどのような働きをしているのか
そして老化やがんに活性酸素がどのように関わっているか
などを知っておく必要があると思います。
今回紹介する『活性酸素の話』は、国立がんセンター研究所で
発がんのメカニズムについて研究を重ねてきた
永田親義先生によるものです。
永田先生は、ノーベル化学賞を受賞した福井謙一博士のもとで
フロンティア電子理論を
生体の反応に適用する研究も行なっています。
『活性酸素の話』は、量子生物学の専門家である永田先生が
高校生と専門家の対話という読みやすい形式で
体内で起こっている電子のやり取りを説明した本です。
1996年に発行された本なので、やや古い内容もあるのですが、
専門的な化学の知識がなくても、
生体内で起こっているさまざまな化学反応について
理解することができるように工夫されています。
『活性酸素の話』目次
◆ 酸化的ストレスとがん
この本の「第7章 ガンと活性酸素」の中の
「酸化的ストレスとガン」という項目では、
体が活性酸素によって酸化するとどうなるのかについて
以下のように説明しています。
生体は進化の過程で、酸化的ストレスから体を守るために酸化を抑えるいろいろのものを使って、酸化的ストレスの主役である活性酸素を消去する仕組みを作り上げてきました。(中略)SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素がそうですし、このほかにたとえばA、C、Eなどの各種ビタミンなども抗酸化剤(アンチオキシダント)としてはたらきます。このような防御方法を獲得していても、放射線に曝されるとか、発ガン物質を取り込むなどして体内に活性酸素、つまり酸化促進剤の量が増えたり、あるいは抗酸化剤の量が減るなどすると、酸化還元のバランスが崩れて酸化促進の方向に傾くことになります。このような酸化過剰状態を酸化的ストレス状態といいます。
このような酸化的ストレスに満ちた状態こそが、
「がんになりやすい体質」だと考えてもいいでしょう。
ここで永田先生が説明していることは、
このブログのエントロピーとデトックスで説明した
以下の内容ともほぼ重なります。
生きている限りエントロピーが溜まってしまうことは
避けられませんが、できるだけ質のいい食べ物、
つまり酸化を遅らせる「抗酸化物質」を取ること、
そしてそれでもなおかつ溜まってしまう
エントロピーをうまく排泄する知恵が
必要になってくるでしょう。
また、ミトコンドリア内で電子がやり取りされ、
エネルギーを作り出す電子伝達系についても
非常に分かりやすく書かれています。
分子生物学や発がんのメカニズムを知りたい人にとって
興味深い本だと思います。