京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

大腸癌多発肝転移

今日は大腸癌切除後多発肝転移の方のお話です。病状が進行してホスピスを勧められていたが半年後に劇的に肝転移巣が消失し回復しつつある方です。Warburg Effectに基づいた生活指導を併用して効果が出たと思います。 抗がん剤は極めて少量だけ用いました。

64歳男性。 喫煙もかなりあったそうです。
もともと喘息があり京大呼吸器内科受診しておられました。肺の異常陰影で精査の後肺癌にて2008年に手術を受けています。右下葉に2ヵ所肺癌がありました。リンパ節転移はなかったそうです。
2009年末に人間ドックで便潜血があり、排便も不規則になり検査を受けた結果結腸癌と診断され、京都の某病院で大腸ファイバーを受け、S状結腸から直腸にかけたところで2cm大の癌を指摘され腹腔鏡下手術を受け、リンパ節転移もないと言われています。 しかし2010年6月初めに腫瘍マーカー・CEA13.5に上がり20数個の肝臓転移を指摘されています。その後抗がん剤治療としてFOLFOX+Avastin2週8回を受けていたが改善は認められていませんでした。抗癌剤のための免疫不全の結果か緑膿菌肺炎を来しクラビット、ゼリナック治療を受け出した。 このため抗がん剤は中止となっていました。


この方は大腸癌組織での検査でK-RAS野生型(変異なし)でありパニツムマブ使用可能でありました。
私のところには2011年10月にすることがないのでホスピスに行くようにと言われ来院されました。その頃の肝転移巣の画像がですが添付画像のように多発は移転移送が巨大に増殖し肝機能の悪化も認めていました。
Warburg Effectに基づいた生活指導という意味では癌は『解糖系・発酵』でエネルギーを取り出しているのでそれをおとなしくするにはNa-H exchangerを止める事はかなり意味のある事です。その方法は簡単には食塩制限です。患者さんに食塩制限をしてもらい同時に高K+(カリュームイオン)を大量に食物から摂ってもらいました。またごく少量の抗癌剤 TS−1 20mg/日を隔週で服用してもらいました。通常TS−1は体表面積m2あたり60-80mg投与するのでこの方の標準的投与量なら100mgぐらいです。飲み方も2週間服薬して1週間休薬する事が多いです。 同時に大学病院医依頼して『パニツムマブ・ベクティビックス』を標準量で合計6回投与してもらいました。 CEAのグラフに示すように初診時2011年10月に144.8が次第に上昇し2012年2月には1550まで上がりました。この頃まで約2ヶ月間上記治療が継続されています。体の状態がかなりWarburg Effectを抑えられそうなところだったのでこのまま継続しましょうと言って食事指導を含め治療を継続していたところ2012年3月末にはCEAが39.8にさらに4月末には13.8に劇的に低下してきました。画像上も4月に撮ったMRIでは肝転移巣はほぼ消失していました。

2012年5月末現在CEAは1550から13.8に低下しており元気に日常生活を送っておられます。
2012年6月中旬にCEAは9.7に低下しました。