京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

「第2回―がん細胞の特徴―」

前回、患者さんの一例をご紹介させていただきました。今回は、がん細胞はなぜ増殖していってしまうのか?そんながん細胞の性質に迫ります。



今回、一番重要なことは、がんは特別な状況におかれた細胞が、勝手に生き延びようとするために、ある性格を獲得したものだということです。細胞ががん化すると、一般的にはPET検査で陽性を示します。そのPET検査陽性とは、がん細胞がエネルギーとしてブドウ糖の取り込みを大量に行っている状態です。

この状態は、1930年ごろ研究していた方の名前がつけられて、ワールブルグ効果と言います。これを利用したがん治療が、2004年くらいから、盛んになってきておりますが、薬としてはまだ出てきていません。ワールブルグ効果によって、がん細胞の中には大量の水素イオンと乳酸が生成されます。この状態は乳酸発酵している状態と同様で、がん細胞は、乳酸や水素イオン(プロトンと呼びます)によりpHが下がってきます。これを細胞外に放り出さないと、がん細胞は自分たちも生きることができないので、いくつもポンプが出ています。

一番大きなポンプがナトリウムとプロトンの交換器で、これを止めると、抗がん剤が効く可能性やがんがおとなしくなる、又は免疫細胞が働きやすくなる等の報告があります。これががん細胞の一つの特徴です。もう一つの特徴、これが梅エキスを使う理由ですが、がん細胞は分裂していくときに、脂肪酸をほとんど自前で合成するという報告があります。がん細胞の脂肪酸合成酵素は非常に活性が高く、この脂肪酸合成酵素の働きを止めることができれば、何らかの形で効くだろうと考えられます。

次回は、このがん細胞の活性化に関係が深い牛乳などの乳製品についてのお話です。