京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

「第7回―がんを招く生活2―」

今回は、患者さんのご紹介です。前回お話ししたように、生活の中での大きな“ゆらぎ”ががんを招きます。そんなゆらぎの大きい生活の典型をしてこられた方です。

40歳のまだ若い、ちょっとヤンキーみたいな美容師です。がんが胸の中に広がり、水が溜まるがん性胸膜炎という病気で腸骨、腰の骨にも転移していました。一般的にこういう人は、半年くらいですぐに亡くなります。もともと2010年に異常と診断されたにもかかわらず放置していました。2年後には水が溜まり、腺がんが出てきて、更に骨盤にも転移している、?期の非常に重篤な状態まで進行していたのです。その上タバコはアメリカンスピリッツという、かなりきついタバコを1日40本吸い、夜更かしもしますし酒も飲みます。このように、体が元に戻れる幅の中から外れるようなことばかりやっていたら、見事にがんが起きました。大阪の病院で抗がん剤の治療を受けることになったが「どうしたら良いですか?」と相談に来られたので、抗がん剤が効く体を作りなさいと伝えました。

肺の画像を見ると、管を入れて胸に溜まった水を抜いたところです。2〜3ヶ月でずいぶん、がんが小さくなり、骨盤の転移も合計6回くらいの化学療法を行い、矢印の部分だけ残っているので、放射線を照射してもらいました。

この方は、がんのポンプの1つである、ナトリウム・プロトン・エクスチェンジャーという交換器を止めるために、塩分制限をさせました。最初に来院された時には尿中の塩分が100mEq/lでしたが、塩分制限をしてもらうと、15mEq/lにさがりました。塩分制限をすることは非常に辛いです。塩があると、何でも美味しく感じますし、特に大阪はB級グルメがたくさんありますから、コテコテのソースつけてマヨネーズを乗せて食べます。そういうことが出来なくなって、時々、気が狂いそうになる、と彼はブログに書いていました。『もとヤーンの肺がんが消えちゃったブログ』です。興味があったら覗いて見てください。



この指導の結果、大きな肺がんが抗がん剤で消えていきました。現在は元気になり、腰の骨に転移したものも放射線で落ち着いています。これから再発しない体をきちんと作らないといけないのですが、彼はちょっと軽いので、どれくらい出来るか。きちんと取り組んでくれると思いますが、心配しています。彼にはこの時、梅エキスを1日10g摂ってもらいました。うちで使う医療費は、再診料の210円と梅エキス代の6000円だけです。

なぜ、このようにがん治療がうまくいったのか、次回はがん細胞発生のメカニズムをもう少し詳しく説明をしてみたいと思います。