京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

「第8回―がん細胞を取り巻く環境1―」

今回と次回は、少し難しい話になりますが、どうかじっくりと読んでみてください。

がんというものは、自分で自分の体の中に、作ったものです。患者さんは、良くおわかりかと思いますが、一般の先生は、「がんを叩きましょう」と言いますね。しかし、叩いてはいけないと思います。バクテリアのように叩いたら治るわけでは無いのです。「好きなものを食べなさい」というのは、医者が抗がん剤を投与するのに、少しでも患者さんが、元気そうに見える方が良いからです。医者と薬屋の都合ではないかな、と私はと思っています。問題なのは1日何千個も出来る、異常細胞を排除することが出来ない、免疫力が落ちたことが一番の理由なので、免疫力を回復させない限り、こういう病気が治らないということは、本来なら普通に考えることです。しかし、いまの病院の治療は、「叩いて、叩いて、叩きまくって、免疫力を無視する」という先生がほとんどです。こういう変化は全て、化学反応で起こるのですが、生体の中の化学反応というのは、分からないこともたくさんあり、先生方は偉そうにしていますが、分かってきたことはごくわずかです。



簡単にいうと、がん細胞特有の性格を利用すると、がんがおとなしくなるので、それを理解している医者が治療したり、免疫力を上げると、結構効果が出ます。ちなみにがん細胞がブドウ糖を欲しがる理由は、ワールブルグ効果(本講座?参照)でエネルギー代謝を行っている以外に、GLUT(Glucose Transporter)と呼ばれるブドウ糖輸送体が、がん細胞には普通の細胞の数倍、細胞膜に発現しており、甘いもの(糖分)を食べると、がん細胞はそれを取り込んで、元気になります。血糖が緩やかに上がれば、いかに受容体が多くても、他の細胞もあるので、ブドウ糖ががん細胞だけに供給されることはないのですが、急速に血糖が上昇すると、がん細胞はチャンスとばかりに、エネルギーをたくさんもらうことが出来ます。こうしてエネルギーをたくさんもらうと、ワールブルグ効果をさらに回転させることにつながり、がん細胞の外、すなわち正常な細胞を酸性にし、傷つけていってしまうことになるわけです。
この悪循環を止めるにはどうすれば良いのか。一つは糖分の過剰摂取をやめることが頭に浮かびますが、もう一つ、ワールブルグ効果の肝であるナトリウム・プロトン交換器を制御することが非常に重要になってきます。

上記はナトリウム・プロトン交換器に着目し、これを制御するための物質作りが最近、アメリカでも行われているという論文で、NATUREのDRUG DISCOVERY という本に掲載されています。



したがって、がん細胞は正常細胞と代謝が異なるので、これを抑えてあげるとよい、ということになります。
 次回に続きます。