京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

「第9回―がん細胞を取り巻く環境2―」

前回は、がんの代謝について説明をしました。今回はその続きになります。

細胞というものを考えると非常に単純な細胞でさえ、代謝のメカニズムは何千という化学反応が絡み合って、お互い協調したネットワークを作っています。したがってどこかをワンポイントで抑えても、効果は得られません。その絡み合いの中で、お互い揺らぐけれど、ある揺らぎの範囲内で協調するから健常という状態が維持出来るので、悪い方に一度落ち込むと、戻すためにはこれまでと同じことをしていても駄目で、一度思いっきりエネルギーを使って、戻さないと戻すことは出来ません。それが、最初に思い切って野菜や果物をしっかり摂って、一度、体を立て直す、ということになるのです。



これは南カリフォルニア大学のValter Longoという先生が作っている『L-Nutra』というサプリメントです。抗がん剤を受ける前の1週間、自宅にデリバリーされるそうです。彼はこれを摂取すると、良い効果があると言っています。抗がん剤を受ける前の食事をきちんとすれば、抗がん剤も効くようになります。また、2〜3日の断食も有効で、マウスに餌を与えなかった場合、正常細胞は化学療法から保護したが、がん細胞は保護しなかったことも報告しています。栄養が供給されない状態にすると、正常細胞はストレスに強いけれど、がん細胞は弱い為、断食によってがん細胞の抗がん剤への感受性がさらに高くなることが示唆された、という報告です。

繰り返しになりますが、がん細胞のポンプを止めることが重要で、いろいろなポンプを止められればいいのですが、一番簡単にポンプを止めることができるのが、食塩を制限することです。

次回からもう少し実例を元に説明をしていきたいと思います。