京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

「第13回―トリテルペノイド類の重要性―」

今回はがん細胞の脂肪酸合成を抑制する方法について説明していきたいと思います。

前回、がん細胞は脂肪酸合成が盛んであることを説明しましたが、脂肪酸合成酵素の活性を抑制してくれるものとして、どうもトリテルペノイド類や、そこに至るまでの代謝産物が有効であるように感じています。いろんな説があり、まだまだ定説は無いのですが、現実に先ほどのように梅エキスでよくなる方もいるので、そう感じています。

脂肪酸合成酵素を阻害してくれるものとして、5つの物質があり、これを薬として動かすように研究が行われています。一番有名なのはEGCGで、エピガロカテキンガレートと言うお茶の成分です。お茶を飲むときは、出来たらコップの底に残ったモロモロの微粉まで、飲んでください。微粉の中にたくさん含まれています。ちなみに静岡の掛川というところで」は、胃がんの発生率が低いそうです。掛川深蒸し茶で、1日に何杯もモロモロまで飲んでいるそうです。


トリテルペノイドという物質は上記の図のように、様々な良い効果が見られるようです。どうも抗がん作用、抗炎症作用、抗酸化作用、抗高脂血症効果などがあるようです。

実はオタネニンジンに含まれるジンセノシド、そして漢方薬カンゾウに含まれるグリチルリチンは強ミノCの原料です。柴胡に含まれるサイコサポニンなどもトリテルペノイドで、報告されているだけで、2万種類ほどあります。



これはPlos Oneという文献ですが、高脂肪食をネズミに食べさせると、脂肪肝になります。図中の白い点が全部、脂肪の沈着です。その餌にウルソール酸を混ぜて与えると、この白い点がずいぶん減ってきます。これはウルソール酸が骨格筋と褐色脂肪細胞を増加させることで減少させることができるのです。ちなみに褐色脂肪細胞というのは、赤ちゃんの脂肪細胞です。

もう一つ、NATUREにこういう報告もあります。これはマウスの肺ですが、vinyl carbamateという発がん物質を曝露させると肺がんが出てきます。そこに合成したオレアノール酸を使うと、図のようにほとんどがんが出なくなります。これらトリテルペノイドは、例えばウルソール酸はリンゴの皮に多く、ベツリン酸は樹皮の下やローズヒップにも含まれています。

がん細胞の特徴である、多量のブドウ糖利用によるWarburg効果、その主役とも言えるナトリウム・プロトンポンプ、そして脂肪酸合成能力の高さ、これらを抑制することによりがん細胞の活性を抑える必要があることはおわかりいただけたでしょうか?
すなわちこの理論を以って、食生活において糖分の取り過ぎ、塩分の取り過ぎを抑えつつ、トリテルペノイド類を摂取するという食事療法につながるわけです。

次回から、2回に分けて総論を書いていきます。