京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第2回〜

前回、「何でがんはできるのか?」ということについて、発生のメカニズムに迫ってみました。

がんは、生活習慣の「ゆらぎ」が引き起こすと考えられるわけですが、生活習慣の「ゆらぎ」とはすなわち酒、タバコ、野菜は摂らない、肉を食べる、そういうことを指しています。

このような「ゆらぎ」の大きい生活をしていると、正常であった細胞が炎症を起こしている場所でがん化してきます。



炎症とは、生体が何らかの有害な刺激を受けた時に免疫応答が働き、それによって生体に出現した症候であるとされています。さらにその免疫応答の結果によって生じる病理学上の変化を示す病理学用語でもあります。
炎症は、通常、細菌やウィルスによる感染や、火傷や打撲などの熱傷・外傷、アレルギー反応などにより起こるとされていますが、生活習慣により「ゆらぎ」の大きくなった体内では、体内環境の変化により炎症が起きています。
たとえば、食べ過ぎ飲み過ぎで、非常に太ってしまった場合、体内には脂肪がたくさん蓄積されています。このように、人にとって不必要なほどに脂肪が蓄積された場合、それを何とかもとに戻そうとアディポサイトカイン(アディポサイトとは脂肪細胞、サイトカインは細胞から放出され、種々の細胞間情報伝達分子となる 微量生理活性タンパク質のことを言います。つまり脂肪細胞から出る情報伝達因子と言い換えられます。)というものが出ます。有名なところとしては、レプチンやアディポネクチン、TNF-αなどがあります。
このようなアディポサイトカインにより肥満が解消されるならそれは喜ばしいことかもしれませんが、この中にはがん細胞の成長や増殖と関わるものも含まれており、それが非常にたくさん出ている状態は、まさに炎症と似た状態になっています。

サイエンティフィック・アメリカンという論文雑誌では、『がんは急性炎症と同じメカニズムで血管を誘導する』という報告が2004年ごろに報告されています。がんもまた炎症があるときと同じ因子(サイトカイン)を出して、血管新生を促します。周りの細胞も同じような因子を出すように、がんが誘導することも、最近言われております。血液の中で炎症反応CRPが上昇、好中球も増加、リンパ球は減少する。つまり、これはどういうことかというと、生活習慣の大きな「ゆらぎ」が、がんの発生を引きおこし、さらにそのがんが、まわりの細胞をがんへと変えていくという負のスパイラルを意味しているわけです。

なぜ生活習慣の「ゆらぎ」ががんと結びつくのかわかっていただけたでしょうか?

次回は、がんとブドウ糖の関係を探っていきます。