京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第3回〜

あと5日ほどで2013年も終わりですが、みなさまは今年一年どんな年でしたでしょうか?来年も引き続き、京都からすま和田クリニックをどうぞ宜しくお願い致します。

前回、がんと生活習慣の結びつきについて説明しました。今回は、生活習慣とがんがなぜ結びつくのか、がんという細胞の特徴から迫ってみたいと思います。

人が持つ正常な細胞、例えば筋肉は糖分や脂質といった栄養素からエネルギーを作り出しています。特にブドウ糖を分解し、ATPという物質を取り出すという方法が最も細胞で使われる方法ですが、ATPを一番効率的にたくさん取り出すには、ブドウ糖を分解してできるピルビン酸という物質がミトコンドリアへとわたる「好機的解糖反応」を行う必要があります。これは十分に細胞に酸素がいきわたる状態で起きる反応で、酸素が行き届かない状態では、ピルビン酸は乳酸へと変わります。これを「嫌気的解糖反応」といいます。

がんは、酸素が十分にある状態、すなわち「好気的状態」でも「嫌気的」な解糖反応を行い、乳酸を細胞内に作ってしまう性質をもっています。この性質が私たちに生活習慣とがんの間の負のスパイラルを止める大きなヒントを与えてくれます。


もう少し詳しく見ていくと、ブドウ糖をピルビン酸まで分解した時には2単位のATPしかできません。ところが更にミトコンドリアで分解すると36単位ATPが合成できます。本来はこの方が効率的ですが、乳酸までのスピードを1とした場合、ミトコンドリアでのATP合成には100かかります。ですから、特定の環境におかれた細胞は、ピルビン酸をミトコンドリアに渡さないようにし、自分たちのエネルギーを取り出すスピードを早くします。その場合、大量の糖を要求することになるので、簡単にいうと、がんは非常に糖を好むということになります。

このようながん細胞の代謝をワールブルグ効果と言います。がん細胞は、細胞内に乳酸を作ることで同時に水素イオンもため込んでいきます。水素イオンはリトマス試験紙を青くする物質ですから、水素イオンがたまるとがん細胞中の酸性度が上昇します。細胞は酸性度が高い状態では死んでしまいますので、がん細胞も困るわけです。
ではがん細胞は一体どうやって酸性度が高い状態を逃れようとするのでしょうか?

次回は、がん細胞が持つもう一つの特徴についてご紹介します。