京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

ビタミンC大量投与で「からだ力」が向上した舌がんの男性(67歳)

    私のクリニックでは、ビタミンC大量投与によるがん治療を行っています。
    今日は、ビタミンCの大量投与によって
    ステージ3のがんが改善した患者さんの症例を紹介したいと思います。

    ◆ ステージ3の舌がんが転移


    この患者さんは、2007年に愛知県の病院で
    ステージ3の舌がんと診断され手術を受けましたが、
    間もなく頚部リンパ節に転移が見つかって
    放射線治療を受けています。

    1年半後に縦隔リンパ節と肺への転移が見つかり、
    再度放射線治療を受けました。

    2度目の放射線治療の直後から40度の高熱を発し、
    胸膜炎による胸水が溜まっていることがわかりました。
    この時点で炎症反応を占めるCRP値が
    20以上という高い値を示していました。


    結核の治療が始まる


    当時入院していた病院では、
    胸水を調べてもがん細胞が見つからなかったため、
    結核になったのではないかと疑われました。

    実はその頃、SCCという腫瘍マーカーの値が
    かつては1.4だったのに17.4へと急上昇しており、
    転移と考えるべき状況でした。
    しかし当時の主治医は結核の治療を始めたのです。

    しかし腫瘍マーカーの数値は依然として高く、
    がんの検査方法のひとつであるPET検査でも
    がんの存在が示されたため、
    TS‐1という抗がん剤を使い始めたといいます。

    ◆ 抗酸化療法を始める


    結核治療をはじめようとしていたタイミングで
    この患者さんは和田クリニックに来院しました。
    初診時の血液を見てみると、
    リンパ球の数が数百しかないという免疫不全の状態であり、
    炎症反応を示すCRP値も
    40以上という高い数値を示していました。


    この患者さんのCRP値は、治療を行っていくうちに、
    治療スタート当初の10分の1である4.2まで減少しました。
    そして現在は3.6程度と安定しています。

    和田クリニックで行った治療は、
    食事指導や抗酸化サプリメントの摂取などです。
    この患者さんは厳密な甲田式食事療法(玄米生菜食)は実践しておらず、
    野菜を中心とした玄米自然食です。

    抗酸化サプリメントとしては、
    雲南イチイの木のお茶と青梅エキスを服用しています。

    ◆ ビタミンCでCRP値が下がった


    この患者さんの血液を見てみると、
    炎症反応を示すCRP値が高くなっており、
    非常に体が酸化していました。

    また好中球とリンパ球の比率は13.2というアンバランスな状態で、
    免疫力が低下していることも分かりました。



    このようなパターンには活性酸素除去効果が期待できる
    ビタミンCの大量摂取が効果的だと考え、
    週1回、4、5回にわたってビタミンCを摂取してもらったところ、
    CRP値が下がると同時に腫瘍マーカーの数値が
    10分の1程度まで顕著に下がってきたのです。


    この症例は抗酸化作用を持つビタミンCによって
    からだ力が向上した好例だといえるでしょう。

    ◆ この患者さんの経過について


    残念ながら、私のクリニックを訪れてから1年半後に、
    がんの症状が進みご逝去されました。

    体を酸化させない治療を行うことで、
    患者さんのQOL(生活の質)はかなり高いものに
    なったと考えられます。

    ◆ ビタミンC大量投与に関する注意点


    ビタミンCの大容量静脈注射を行う場合、
    患者さんの血中のG6PDという酵素活性が
    正常かどうかを調べることが必要です。

    もしこの酵素が機能不全の場合、
    ビタミンCの大容量投与により溶血性貧血を起こし、
    重篤な状態になる恐れがあるので注意が必要です。