京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第4回〜

皆様、明けましておめでとうございます。早いもので平成も26年となりました。
本年もからすま和田クリニック、そして本ブログを宜しくお願い致します。

前回、がんは糖分が大好きであることについてご説明しました。
がんは糖分が大好きである一方で、糖分からエネルギーを作り出そうとすると、細胞内を酸性にしていってしまいます。ではその酸性になった細胞内をどうやってもどしていくのか?ということについて今回はご紹介します。

がんは細胞内が酸性に偏ってくると代謝がうまくいかずに、生きていけなくなり、水素イオンも乳酸も、外に放り出そうとします。がん細胞の表面には、放り出すためのポンプが多く働いています。最も代表的なポンプはナトリウムイオンプロトンポンプ(プロトンとは水素イオンのことです)と呼ばれるもので、水素イオンを放り出すための交換相手がナトリウムイオンです。体の中にたくさんのナトリウムイオンがあれば、がんは交換相手に困りません。ナトリウムを大量に含むような食事、すなわち塩分の濃いような食事をしているとがんにとっては非常に都合がいいわけです。
がんの治療のために減塩しなさいとするのは、ここに大きな理由があります。


これ以外にいくつもポンプがあり、それを止めるための薬がいくつも考えられています。がんは、このようなポンプのシステムとともに、糖分の吸収を高める輸送機のようなもの(GLUT1といいます)も大量に備えています。ですから高血糖・高血圧になるような食事をしていると、がん細胞が元気になるのは当然で、がんが元気になるのはこういう理由です。

結局のところ、がん細胞は実はがんが生きていくためというよりも、むしろ生物が増殖するためというのと同じ理由で、がんが生きていくために、そして増殖するために便利なワールブルグ効果というブドウ糖の消費をします。そして同時に、がん細胞は脂肪酸を内部で合成します。この話は少し難しいので、またの機会にお話ししたいと思いますが、次回はがん細胞の増殖にかかわるもう一つの物質IGF-1についてお話ししようと思います。