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今回も、前回に引き続き、昨年末に行った北海道大学医学部生へ行った講義の内容のまとめです。
今回は、第2回として、「がんはなぜできるのか」について書いていきます。
がんはどのようにしてできるのでしょうか。
慢性的に起きている炎症などによる障害の繰り返しで傷ついた細胞は、修復されていかなければなりません。そのときに、栄養(ブドウ糖)はあるのに酸素がないという状況になると、ミトコンドリアが崩壊し細胞はアポトーシス(自滅死)を起こします。[下スライド:緑の細胞]
しかし、その中でもなんとか生き延びようとした細胞のミトコンドリアでは、逆行性信号というシグナルが出て、細胞は正常細胞から腫瘍(がん)細胞の性格を帯びるようになります。[下スライド:黄色の細胞]
逆行性信号の詳細は未だ不明ですが、浸潤行動を誘導し、正常細胞に腫瘍細胞性格を誘導するシグナルであることがわかっています。
つまり、仮説ではありますが、がんとは、慢性炎症の場で、栄養があるのに酸素が少なくなり、勝手に生きていくことを余儀なくされた細胞であると考えられます。がんは自分自身の身体の中で作ったものといえるのではないでしょうか。
次回は、この逆行性信号によって誘導される、腫瘍細胞性格(がん細胞の特徴)とは何か、ということについて書いていきます。