体内に蓄積するエントロピー
- 作者: シュレーディンガー,Erwin Schr¨odinger,岡小天,鎮目恭夫
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◆ 漏れ出てしまった活性酸素
原始地球に生まれた生命体は、
硫化水素をエネルギーとして生きていました。
ところがある時点で、酸素をエネルギーとする
生命体が生まれたのです。
酸素を使うことで、
効率よくエネルギーを生成することができ、
結果として生物は大きな体を
つくることができるようになったのですが、
問題もありました。
われわれもまた、
酸素を使って生きるためのエネルギーを
作っているのですが、
酸素を呼吸することで必然的に
体内に活性酸素が蓄積していくことになります。
この活性酸素こそが、
がんを引き起こすきっかけともなるエントロピーなのです。
空気中にある酸素を活性酸素に変えて、
体内でエネルギーを作る過程で、
どうしてもエネルギーに変換することができず、
漏れ出てしまう活性酸素があります。
漏れ出てしまったこの活性酸素を、
私はシュレーディンガーの概念を用いて、
エントロピーと呼んでいます。
◆ 毒性の高い活性酸素 ヒドロキシルラジカル
活性酸素の大きな問題は、
さまざまなものに反応するということです。
活性酸素にもさまざまな種類があるのですが、
最も危険な活性酸素は
ヒドロキシルラジカルと呼ばれるものです。
ミトコンドリアの中で行われている
酸化反応の近くにわずかでも鉄(金属)があると、
活性酸素は攻撃性の強いヒドロキシルラジカルに変わります。
ヒドロキシルラジカルは何十億分の一秒という速さで
近くのものと結合してしまい、その物質を変成させるのです。
遺伝子、たんぱく質、脂質などすべての細胞成分が、
ヒドロキシルラジカルによって化学反応を起こし変成することで、
機能障害が引き起こされます。
ヒドロキシルラジカルが強い攻撃性を持つといわれる理由は、
反応の速度が速く反応性が高いためです。
放射線やX線、抗がん剤なども
ヒドロキシルラジカルを発生します。
たとえば放射線を少量浴びる程度であれば
生命に危機を及ぼしませんが、
大量に浴びると死んでしまうというのは
このような理由によります。
◆ 体の酸化を抑えるには
酸化という形で体内に蓄積した
エントロピーの上昇を抑える方法としては、
まず、抗酸化物質を摂取すればよいでしょう。
抗酸化物質を多く摂取すると酸化を食い止めることができ、
体内の酸化ストレスが減少します。
これによってエントロピーの増加を
抑えることができるのです。
抗酸化物質にはビタミンC、ビタミンE、リコピン、
フラボノイド、ポリフェノールなど
さまざまな種類がありますが、
主として食物で摂ることになります。
抗酸化物質の摂取だけでは、
いったん体内に蓄積したエントロピーそのものを
下げることは難しいでしょう。
体内に溜まったエントロピーを下げるには、
デトックス(毒素排出)しかないのです。
エントロピーを下げるデトックスについては、
次回に説明します。
活性酸素が体内でどのような働きをしているかは
このような本が参考になります。
活性酸素の話―病気や老化とどうかかわるか (ブルーバックス)
生命にとって酸素とは何か―生命を支える中心物質の働きを探る (ブルーバックス)