京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第8回〜

今回は、がんの特徴の一つ、「脂肪酸合成」についてご説明したいと思います。



上記のように、がん細胞においては、油、脂肪酸というものは、がん細胞が作っていて、食事中の脂肪はほとんど使っていません。脳腫瘍のなかには、油を使って治療をするという方法があります。脂肪酸によるエネルギー代謝を促進させることで、TCAサイクルの代謝を変えて、がん細胞に栄養を与えない(がん細胞は解糖系の最終代謝産物であるピルビン酸を乳酸へと変えることから、TCAサイクルを使わない経路でエネルギーを得ています。)という治療です。この話は詳しくはしませんが、脂肪酸合成を止めることは、意味があると言えます。

人の腫瘍の細胞外pHというのは低く、酸性を示しています。酸性状態になると腫瘍性細胞の細胞外酸性に対する適応を要求され、ポンプ類が色々働きます。また、脂肪酸合成の酵素の活性は増強するように見えます。このような状態になると抗がん剤や免疫細胞療法にも、抵抗力を増すので、がん細胞外の酸性度を下げることは、がん治療に有効です。食事でしか変えることはできませんので、なかなか難しいですが、抗がん剤治療を受けるときには、こういう食事にしなさいという指導が必要になります。

では脂肪酸合成を阻害するにはどのような方法があるのでしょうか。次回はそれについてお話ししたいと思います。