京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第7回〜

前回、IGFの働きを止めるのに一つ、いい薬剤があります、とご紹介しましたが、今回はそのお話をさせていただきます。

メトフォルミンというものですが、一般的には糖尿病の方に良く使われます。

このメトフォルミンはビグアナイドというフレンチライラック(ガレガソウ)から取り出した薬物で、もともとはヨーロッパで夜間多尿の人が、ガレガソウを煎じて飲むと治るという言い伝えがあったものです。だから糖尿病の治療薬になります。

これはインスリンを無理やり分泌させるものではないので、比較的すい臓に対しての負担はありません。それで標的遺伝子を探していくと、先ほど申しましたmTORC1というものになります。

ちなみに糖尿病の方で、がんの発生頻度のグラフを書いてみますと、メトフォルミンというビグアナイドを摂っている人たちと、摂らない人たちでは、どうも摂っている人たちのほうが発がん率が少なく、33%くらいがんが出にくいということが言われています。



違う研究でもメトフォルミン群では、がんが出にくいけど、摂ってない人たちは早く出るという結果でした。ですが、日本人の先生はこの薬を好みません。非常に古い薬で、乳酸血症の副作用が出るため、あまり使われないということもあるのですが、非常に安い良い薬です。1錠10円ですから1日3錠飲んで、1日30円の治療です。

ここまで7回をまとめてみますと、まず、がんは非常に糖分を好みます。そしてミルクはIGF-1を持っているので、がんを促進することから糖尿病のような慢性炎症は、がんの予備軍だということが分かります。
次回は、がんの特徴である「脂肪酸合成」についてご説明したいと思います。