京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

「第11回―医者が使いたがらないメトフォルミン―」

今回も引き続き症例の紹介をしたいと思います。



この患者さんは、リンパ節に多数転移している肺がんで手術を受けられて、「あなたは再発します」と受診のたびに担当医に言われて、僕のところに来ました。たしかにN3症例は、10人のうち9人が3年後には亡くなるような状態です。彼は糖尿病も患っており、かなり酒飲みです。

一所懸命いろんなことをやってくれているのですが、好中球が増加、N/L比が上がってきて、HbA1cが上がる。こういうときは、大体お酒を飲んでいて、酒を止めると、リンパ球が増えて好中球が減っていき、N/L比が下がり、HbA1cも下がってくる。これで術後3年半お元気なので、大体コントロール出来ていますが、どうしても酒に手が出るので、まだまだ難しいかなと思います。



ちなみに彼は以前お話しましたIGF-1を止めるもう一つの方法で、糖尿病に対して日本ではほとんど使われない、ビグアナイド系のメトフォルミンを使っています。これを使うと、良い状態を作ることが出来ます。ですが糖尿病の先生は、メトフォルミンを使うのを嫌がります。なぜかというと1錠10円、安すぎるのです。1日に3錠から6錠飲んでも1か月1800円。

しかし、この薬は世界中で最も処方されています。糖尿病の方や食後高血糖も併発されている方にビグアナイドを使いますと、結構がんは落ち着きます。ぜひ知っておいていただきたいと思います。

次回から、本講座の冒頭で解説したがん細胞の脂肪酸合成とその抑制について詳しくお話をしていきたいと思います。