京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜5

前回は、治療に対して精一杯向き合うことができるためにも心の持ち方が大事であることをお伝えしました。
今回は少し症例を紹介したいと思います。

癌と食事が大いに関係があることは、ブログを読んでいただいている読者のみなさまは良くご理解いただいていることと思いますが、それを良く示すこととして糖尿病と癌の関係があります。以下の患者さんは大腸癌を患って来院されましたが、以前より糖尿病も患っていました。

過食・甘い物・乳製品などは取り過ぎた結果として、mTOR axisと呼ばれる癌の増殖因子を活性化させてしまうことがわかっています。

非常に興味深いこととして、糖尿病の治療薬として用いられるメトフォルミンという薬は、このmTORの阻害薬として使われています。
メトフォルミンは、糖尿病罹患者にとってリスクとなる高血糖の状態を引き起こす糖新生を抑制するために、肝臓においてAMPKを活性化させる働きを持っていますが、それは同時に癌細胞におけるAMPKの活性化にも働きます。この活性化は、癌細胞の増殖因子であるmTORの働きを抑えることにつながり、癌細胞の増殖を抑えることにもつながるのです。

実際にこの患者さんは糖尿病の治療薬をメトフォルミンに変え、食事指導をすることで、糖尿病が改善されていき、それに伴って癌細胞もだんだんと小さくなっていきました。治療開始から約1年半が経ちますが、非常に元気に日常生活を送っています。

このように改善されていったのは、この患者さんが現状に悲観することなく自分の意思を持って治療を続けていったことにつきます。

次回はまた別の症例を紹介したいと思います。