京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜11

 前回は、元気で前向きに過ごしながら天命を全うしていった患者さんのご紹介をさせていただきました。

 今回は、これまでにお見せしたような、通常では治癒は難しいと思われる状態から回復した事例に共通する要因をまとめたケリー・ターナー博士の書籍のご紹介をいたします。

 ケリー・ターナー氏は、ハーバード大を卒業後、カリフォルニア大学バークレー校で博士を取得されていますが、この著書「がんが自然に治る生き方」が、その博士論文の内容をまとめたものです。
 この著書は米国でもベストセラーになっており、非常に示唆の富んだ内容になっていますが、原題は「Radical Remission」と言って、直訳すると、「劇的な寛解」となります。

 劇的な寛解、という言葉が指しているのは、余命宣告をされたようながん患者さんの中で、奇跡的に回復を見せた1000例以上の症例報告であり、実際に世界各国を回りながらこれらの症例を分析し、そこに共通する点を見いだしています。下図は、その劇的な寛解の定義について説明したスライドです。

 これらの劇的な寛解を引き起こす要因を、ケリー・ターナー氏は9つにまとめています。

 この9つの内、今回は2つについて説明したいと思います。
1.抜本的に食事を変える
2.治療法は自分で決める
 これらの言葉は、これまで私のブログでも何度も出てきている言葉と思いますし、患者さんが実践されていることのそのものと思います。

 下図の症例は、その1例ですが、この患者さんは、大腸癌切除後、骨盤内リンパ節転移となり、私のところに来た方です。
 この方も、骨盤内臓器全摘、人工肛門などを勧められましたが、その治療は拒否し、食事を中心とした生活改善による方法を選び、それを5年間続けています。現在では、腫瘍も小さくなってきており、経過は良好です。



 どの患者さんにも共通することですが、やはり自分で選び・続ける意思を持つことが肝要と思います。
 その意味で、ケリー・ターナー氏の指摘は、とても的を得ていると私は思います。

 次回は引き続きこの「劇的な寛解」について書いていきます。