京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜9

前回は、治療に対する積極的な姿勢と、癌の指標との関係について、ご紹介しました。
今回は、人のこころと身体を捉える上での考え方について、もう少し詳しくご説明します。


下の本は、ブルース。リプトンというアメリカの細胞生物学者の「思考のパワー」という著書です。
右の図は、パラダイム(ものの見方・考え方)の歴史的な変遷を示していますが、こちらは医療においても非常に重要な図であると言えます。



紀元前から西暦1700〜1800年頃までは、人々は、精神論的な思考・見方をしていました。宗教による意思統率はまさに精神論的なパラダイムと言えます。一方で、1776年の自然神論以降、1859年のダーウィンによる進化論のように、物質論的な思考・見方が強くなっていきます。最近でもヒトゲノム・プロジェクトなどは人を物質的な観点から定義づけてしまおうという考えのもとに遂行されました。
これらの結果、科学技術も飛躍的に発展し、急性の疾患や感染症などによる被害は劇的に減少し、我々は恩恵を受けたわけですが、何度も当ブログでも申していますように、癌や糖尿病といった慢性疾患は、何か一つの薬や、手術をすれば完治するというものではありません。そこで近年では、この物質論と精神論をバランスよく捉えることにより、からだとこころをコントロールしていこうという全体論(ホリズム)へと考え方・見方がシフトしてきているのだと思われます。



自分や家族、友人が病気になれば、我々は大きなショックを受けます。ですが、ショックを受けたとき、思い悩み、投げやりになるのではなく、少し広い視点で自分を捉え直し、今、自分は何をすればよいのか、自分は家族・友人に対して何ができるのか、を考えてみることが非常に重要と言えます。
その気持ち・考え方が、自然と治療に向かう姿勢になるのだと思いますし、そのお手伝いをしていきたいと私は日頃思っています。

次回は、症例のご紹介をしたいと思います。