京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:医食同源・あぶらの話8

今回は、牛乳に続いて、トランス脂肪酸という脂肪酸についてご紹介していきます。

トランス脂肪酸、一度は聞いたことがあるかもしれません。
このトランスという言葉は生化学の用語で、不飽和脂肪酸が持つ二重結合の型を表す言葉です。これまでこのブログでも、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸の2種類の脂肪酸があることを説明してきましたが、実は不飽和脂肪酸の大きな特徴である二重結合にはトランス型とシス型という2つの型があります。

自然界に存在する不飽和脂肪酸は圧倒的にシス型が多く、折れ曲がった形状をしています。一方で、トランス型は飽和脂肪酸と同じようにある意味強制的に直線的な形状になっています。
シス型の不飽和脂肪酸に水素を添加することで、トランス型の不飽和脂肪酸へと変化しますが、このような加工は、シス型を多く含む植物油などを固形状にして、バターのように使う上で、非常に役立ちます(バターの生産よりもコストが安く済みますよね)。
その一方で、身体への悪影響が数々報告されており、特にLDLコレステロールの増加により心疾患リスクを高めたり、プロスタグランディンの合成を阻害することにより癌を含むさまざまな慢性疾患リスクを高めることもわかっています。



このようなトランス脂肪酸の負の影響を懸念して、海外ではトランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国も増えていますが、上記のように多くの食品にトランス脂肪酸は含まれていますので、みなさんもぜひ脂肪酸の摂取の仕方についてはご注意いただければと思います。

次回は、オメガ3とオメガ6のバランスについてのお話をしていきます。