講座:医食同源・あぶらの話4
前回は、必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6について説明をしました。オメガ3と6は1:1のバランスで摂取するのが良いといわれていますが、そのオメガ3とオメガ6についてもう少し詳しく紹介をしていきたいと思います。
以下は前回のおさらいです。オメガ6は比較的簡単に摂取できる脂肪酸ですが、αリノレン酸は亜麻仁油やエゴマ油、DHAやEPAは青魚に多く含まれますので、オメガ3は積極的に取るように心がけなければ摂取が難しい脂肪酸です。
オメガ3が多い食事を摂ることで、大腸癌を改善することができるという報告もあります。
必須脂肪酸から作られるプロスタグランジンには3つのタイプ(PGE1 、PGE2、PGE3)があり、中でも炎症の抑制にはPGE3が重要であると考えられています。このPGE3はEPAから作られることがわかっています。
次回は、もう一つ、オメガ3系の脂肪酸の有効性を示す例を紹介したいと思います。
講座:医食同源・あぶらの話3
前回は、脂肪酸と代謝・病気との関連性について簡単なご紹介をしました。今回はさまざまな油脂をどのようなバランスで摂れば良いのか、またどのようなメカニズムがその裏にあるのかといった部分を紹介していきます。
前回お話したように、オメガ3とオメガ6は人間のからだでは作ることができないため、必須脂肪酸と呼ばれています。また、特にオメガ3は摂取しにくいものであるため、オメガ6が多くなりがちです。
ですが、オメガ3とオメガ6は理想的には1:1で摂ることが望ましいとされています。
オメガ3がなぜそれほど重要なのかということについては、以下の2つのスライドに書いてあるようなことからおわかりいただけるかと思います。
前回もお話したようにオメガ6は分解の過程でアラキドン酸となり、炎症を誘発させるようなプロスタグランジンを作るのに対し、オメガ3は炎症を抑制するようなプロスタグランジンを作ります。これらのバランスが崩れたとき、がんの転移や増殖が進むことは容易に想像できます。
次回は、さらに詳しくオメガ3とオメガ6について見ていきたいと思います。
講座:医食同源・あぶらの話2
前回は、油脂の種類と特徴についての説明をしました。今回は、脂肪酸と代謝・病気との関連性についてご紹介していきます。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸については前回ご説明しましたが、不飽和脂肪酸はオメガからの二重結合の位置により判別する他に、二重結合の数により判別することもあります。
このうちオメガ9と呼ばれるオレイン酸は一価不飽和脂肪酸、オメガ6と呼ばれるリノール酸やオメガ3と呼ばれるαリノレイン酸は多価不飽和脂肪酸といいます。ちなみにこのαリノレイン酸を豊富に含む油脂は非常に少なく、アマニ油やエゴマ油にしかほとんど含まれていません。
人間の体内では、飽和脂肪酸からオレイン酸を作ることはできても、リノール酸やαリノレイン酸は作ることができないので、これら二つを必須脂肪酸と呼んでいます。
これら脂肪酸の体内での代謝には三つの流れがあると言われています。
必須脂肪酸であるリノール酸とαリノレイン酸は、それぞれプロスタグランジンという物質を作りますが、特にαリノレイン酸は意識して摂らなければ摂りにくい脂肪酸であるためバランス良く摂らなければ疾患につながるとされています。
ではどのようなバランスで摂れば良いのか、またどのようなメカニズムがその裏にあるのか、次回以降紹介していきます。
講座:医食同源・あぶらの話1
今回から新講座をはじめていきたいと思います。新講座では、普段から摂りすぎなどで頭を悩ませる「油」とがんとの関係についてご紹介していきます。
油というと、みなさん何を頭に浮かべるでしょうか。
実は「油」と「脂肪」という言葉には違いがあります。バターやラードの様に室温で固形や半固形をしているものを「脂肪」といい、主として動物性の脂肪がこれにあたります。それに対して、天ぷら油やサラダ油のように室温で液体をしている脂肪を油と呼んでいます。これらを総称して、油脂と呼びますが、油脂にはさまざまな種類はあります。
油脂はそれぞれに組成が異なり、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、そして各種の脂肪酸が合成されてできています。
不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸、αリノレイン酸というように二重結合の数と、その位置によって名称がそれぞれ異なります。また、下図の左側末端にあたる部分をオメガといい、オメガに近い部分に二重結合があると融点が低くなります。つまり飽和脂肪酸は最も融点が高いことがわかります。
融点が高い脂肪酸は、酸化しにくいので、保存や調理に適していると言えますが、近年ではそれぞれの脂肪酸の摂取バランスが健康に及ぼす影響がわかってきています。
次回は、これら脂肪酸と代謝・病気との関連性についてご紹介していきます。
講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第19回〜
今回は最後のまとめになります。
結局、がんの住みにくい体を作るには、炎症を抑え免疫能を上げ、そしてそれらを潰さないような、何か抗がんするような物質(抗がん剤に限らないわけですが)が、がん治療には大切なのではないかと思います。
ノーベル化学賞を受賞したイリヤ・プリゴジンの『非平衡における自己構成』という言葉があり、人間の体はこういう形で生きているということを示しています。
図中のdeSとdiSは老廃物を表しています。それは体内において発生するものもあれば、外から取り込んだものも溜まります。生命体にはこれを外に排出する機能が備わっています。大小便による排泄物、呼吸、汗の4つしかありません。これをしっかりやって摂取する方を調節すると、今あるエントロピーを下げることはかなり可能になります。
前述について書いた本が『がんとエントロピー』です。現在、私はこういう考えの下に治療を行い、良い結果が出ることもあれば、もちろん患者さんが亡くなられることもありますが、そこそこの形でやれております。
ちなみにこちらは新刊の『がんに負けないからだを作る』です。
今、私どもが考える“がんが住みにくい体づくり”に適した食事についてのレシピ本を製作しています。また近日中にご紹介できればと思います。
講座「なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?」を見ていただきありがとうございました。
次回以降またいろいろと情報をご紹介していきたいと思いますので、今後ともお付き合いいただければと思います。
講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第18回〜
今回はまとめの続きです。
シュレディンガーは『命を持ったものは、いずれ灰に帰る。平衡状態から灰に帰る。我々は平衡ではなく、非平衡で、ものを取り出して排泄することで生きているので、このやり方次第で今の状態を変えることはある程度できる。健康な状態から病的な状態に行くときには、一直線に行かずに、必ず高い閾値を越えなければならない』ということを説いています。
非線形と言いますが、要するに連続的ではないということで、多数のファクターが絡むような現象は非線形であることが多いのです。ですから、健康な体とがんの体は、ゆるやかに変化するのではなく、一旦がんになると、戻すにはそうとうエネルギーを要することになります。ところが、がんになった体を健康なときと同じように治療してしまうので、治る確率が非常に少ないのです。