京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜15

前回まで、ケリー・ターナー博士の書籍「がんが自然に治る生き方」のご紹介の中から、劇的な寛解を得た方たちがしてきた9つのこと
をご紹介してきました。
今回は、本講座の最終回として、講座全体のまとめをしていきます。

まず、本講座を通して私が言いたかったことは、癌というものは、自分の身体にできたものであり、それは自分の身体を変えない限りはおとなしくならないということです。つまり、癌をたたく、打ち負かすという発想ではなく、自分の生活を変えることに視点を切り替えることが重要なのだと思います。
実際に、自分の生活を変えるという視点に立った治療は、痛みが少なく、身体への負担もとても少なく済みます。ですので、もし自分が癌になったとしても、まずは自分を冷静に見つめ直し、本当に必要なことは何なのか、という視点で考えてみてもらえればと思います。

次に、ケリー・ターナー博士がまとめた劇的な寛解を得た患者さんに共通する9つのことですが、
こちらはどちらかというと、本講座で私が言いたかったことを具体的に表す内容になっていると思います。自分を冷静に見つめ直すといってもなかなかどうしていいかわからないというときには、自分をこの9つの言葉に当てはめてみると良いかもしれません。
そしてポイントは、自分を見つめ直したときに後悔するのではなく、解放する方法を見つけるきっかけを得たのだと、ポジティブに考えることだと思います。
今、自分が何をすべきか、という視点を得る、とは思い悩むのではなくそのような考え方をすることを指していると思います。

以上のようにまとめてきましたが、私のクリニックでは、癌になってしまった患者さんやその家族の皆様に、上のような視点を得るアドバイスをすることと同時に、具体的な治療法を一緒に考えるお手伝いをさせていただいております。
現在の治療に思い悩んでいるとき、本当に必要な治療法を探しているとき、どんなときでも構いませんので、一度ご相談に来て頂ければと思います。また、患者さん本人はもちろん、ご家族やお知り合いにもご紹介いただければと思います。

下記は私の著書です。具体的に癌患者さんがどんな食生活をすればよいかがわかるレシピ本も出版しましたので、ぜひご参考ください。

また、私の仲間と共に、新しい癌治療を考えるための研究会も立ち上げましたので、こちらもぜひご参加頂ければと思います。
一般社団法人 日本がんと炎症・代謝研究会 http://www.scim.or.jp/

以上、これまで全15回の本講座をご閲覧いただきありがとうございました。

また引き続きいろいろと記事を上げていきますので、その際はご閲覧頂ければと思います。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜14

前回まで、ケリー・ターナー博士の書籍「がんが自然に治る生き方」のご紹介の中から、劇的な寛解を得た方たちがしてきた9つのことの内、6つ目までを紹介してきました。
今回は、最後の3つ、
7.周囲の人の支えを受け入れる
8.自分の魂と深くつながる
9.どうしても生きたい理由を持つ
についてご紹介していきます。

まず、周囲の人の支えを受け入れる、ということですが、これは自分が鬱屈しているときや、孤独・恐れ・怒りを抱いているときはなかなか難しいことかもしれません。ですが、そのようなときこそ、周りの人たちに支えられていることを思い出し、治療に向かう姿勢を見直すことも必要だと私は思います。実際に孤独が癒やされているときには、身体の中でも恐怖心を落ち着かせるような働きを持つオキシトシンといったホルモンも出ているそうです。



次の、自分の魂と深くつながる、ということも近い話です。自分をしっかりと見つめ直すこと、例えば瞑想というのは、そういった行為の一つですが、このような時には、やはり睡眠ホルモンであるメラトニンといった物質が出ています。要するにリラックスできていると言うことですね。



最後に、どうしても生きたい理由を持つ、ということですが、これは強烈なモチベーションにつながるという意味で欠かせない要素のように思います。私のクリニックでも同様のケースはよく見られます。下右図の患者さんは、抗癌剤治療で悪性リンパ腫寛解した後、再発し、抗癌剤のつらい治療を乗り越える方法を探して、私のところに来ました。

この患者さんは、つらい治療から解放され、癌を乗り越えるため、食事を全面的に変えることで、血液指標も改善し、再発病巣も縮小し、抗癌剤治療をせずに済んでいます。

この患者さんにも、「どうしても生きたい理由」があったからこそ、生きるための正しい治療を模索することができたのだと思います。
これまで4回に分けて、劇的な寛解に至った方たちがしてきた9つのことをご紹介してきました。

次回からは、これらの9つのことのまとめと、この講座全体のまとめをしていきます。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜13

前回まで、ケリー・ターナー博士の書籍「がんが自然に治る生き方」のご紹介の中から、劇的な寛解を得た方たちがしてきた9つのことの内、3つ目までを紹介してきました。
今回は、
4.ハーブとサプリメントの助けを借りる
5.抑圧された感情を解き放つ
6.より前向きに生きる
の3点についてご紹介していきます。

まず、ハーブとサプリメントの助けを借りる、ということですが、これは、免疫力の回復や体内の浄化につながるものと思われます。
当クリニックでも、野菜中心の食事療法と併せて、梅エキスや紅豆杉など、いくつかのサプリメントを処方しますが、これは体内の免疫力の回復を助けるためです。また、このような食生活は、腸内の細菌叢を変えます。
最近では、腸内細菌叢は、免疫機能や癌化と深く関わっているとされており、適切な形でのサプリメントの利用は、寛解への大きな助けになるのだと考えられます。

次に、抑圧された感情を解き放つ、ということについてです。
少し、言葉としてわかりにくい部分があるかと思いますが、病気というものは、何かしら私たちの身体・心・魂に支障を来たし、詰まりが生じている状態ということができます。



つまりは、この詰まりを解消することはもちろんのこと、詰まりが起きない(再発しない)ように改善をすることが、治療には必要と言うことです。
ストレスや怒り、恐れといった感情は、免疫システムに確実に影響を及ぼすものといえますが、これらを解放することが、免疫システムの持続的な強化につながるといえます。
がんを恐れるのではなく、自分の身体の一部だと考えて、対処していくことが、劇的な寛解には重要なのだと思います。

こちらも、少し似た内容ですが、より前向きに生きる、ということです。



ストレスと前向きな精神は、相反しているものです。ストレスを感じれば、コルチゾルやアドレナリンといったストレスホルモンが出ますし、前向きな気持ちになれば、セロトニンドーパミンといった免疫システム活性化に働くホルモンが出ます。
こうした好循環を生むための取り組みを少しずつ生活の中に取り入れ、習慣化することも治療には重要な要素になってくると思います。



このように書いてきてみると、この講座でお話ししてきた内容そのものということがわかるかと思います。

非常にシンプルに言ってしまえば、食事・口に入れるものの重要性、さらに治療に向かう心持ちの重要性、これらが合わさって初めて、好循環が生まれてくるということになるかと思います。

次回は、この「劇的な寛解」を得た方たちがしてきた9つのことのうち、最後の3つのことについて説明していきます。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜12

前回は、通常では治癒は難しいと思われる状態から回復した「劇的な寛解」を得た方たちに共通する要因をまとめたケリー・ターナー博士の書籍「がんが自然に治る生き方」のご紹介をしました。
前回は、劇的な寛解に至った方たちがしてきた9つのことのうち、
1.抜本的に食事を変える
2.治療法は自分で決める
という2点についてご紹介しましたが、今回は、
3.直感に従う
についてご紹介していきます。

直感というものは、右脳的行動ということはお聞きしたことがあるかと思いますが、この右脳の中でも大脳辺縁系により制御されています。


大脳辺縁系は、脳の中でも上位に位置する部分ですが、ここからの入力や出力が下位の中枢に伝えられることで、ヒトは行動を起こします。そして、その下位中枢に信号を伝える役割を担っているのが、間脳と呼ばれるところです。

この間脳は、視床視床下部で構成されており、以前、下図で見せたようにさまざまなストレス反応に関わる視床下部・下垂体経路を抱えているということになります。

このように、直感に従うということは、本能的に確かさがあると考えた方法を選ぶということであり、モチベーションの向上や、ストレスの軽減などに関与してくると言うことにつながります。
劇的な寛解を得た方さんたちは、このようにして治療に前向きに取り組んでいるのだと思います。

次回も引き続きこの「劇的な寛解」について紹介していきます。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜11

 前回は、元気で前向きに過ごしながら天命を全うしていった患者さんのご紹介をさせていただきました。

 今回は、これまでにお見せしたような、通常では治癒は難しいと思われる状態から回復した事例に共通する要因をまとめたケリー・ターナー博士の書籍のご紹介をいたします。

 ケリー・ターナー氏は、ハーバード大を卒業後、カリフォルニア大学バークレー校で博士を取得されていますが、この著書「がんが自然に治る生き方」が、その博士論文の内容をまとめたものです。
 この著書は米国でもベストセラーになっており、非常に示唆の富んだ内容になっていますが、原題は「Radical Remission」と言って、直訳すると、「劇的な寛解」となります。

 劇的な寛解、という言葉が指しているのは、余命宣告をされたようながん患者さんの中で、奇跡的に回復を見せた1000例以上の症例報告であり、実際に世界各国を回りながらこれらの症例を分析し、そこに共通する点を見いだしています。下図は、その劇的な寛解の定義について説明したスライドです。

 これらの劇的な寛解を引き起こす要因を、ケリー・ターナー氏は9つにまとめています。

 この9つの内、今回は2つについて説明したいと思います。
1.抜本的に食事を変える
2.治療法は自分で決める
 これらの言葉は、これまで私のブログでも何度も出てきている言葉と思いますし、患者さんが実践されていることのそのものと思います。

 下図の症例は、その1例ですが、この患者さんは、大腸癌切除後、骨盤内リンパ節転移となり、私のところに来た方です。
 この方も、骨盤内臓器全摘、人工肛門などを勧められましたが、その治療は拒否し、食事を中心とした生活改善による方法を選び、それを5年間続けています。現在では、腫瘍も小さくなってきており、経過は良好です。



 どの患者さんにも共通することですが、やはり自分で選び・続ける意思を持つことが肝要と思います。
 その意味で、ケリー・ターナー氏の指摘は、とても的を得ていると私は思います。

 次回は引き続きこの「劇的な寛解」について書いていきます。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜10

前回は、人のこころと身体を捉える上での考え方について、少し詳しくご説明しました。

今回は、症例のご紹介をしたいと思います。

この症例は、昨年末にご逝去された患者さんですが、初診は約4年前で、1999年に甲状腺がんの摘出手術を行い、その後、多発肺転移となり、当クリニックに来ました。この患者さんも食事療法を中心とした治療で、その後、病状は回復し、元気に過ごしていました。

この患者さんは、当クリニックに来た頃からすでにホスピスを勧められていましたが、治療を受けた結果、3年間元気に過ごして、最終的には、ホスピスで少しの期間を過ごした後、ご逝去されました。
この患者さんからは、亡くなる5日前に手紙をいただきましたが、死期を悟ったかのような内容で穏やかな気持ちが伝わりました。

このように、人生の時間を苦しんで終えるのではなく、元気で前向きに過ごしながら天命を全うできることは、自身にとっても家族にとってもとても重要なことと思います。
その意味でも、治療に向かう姿勢や、前向きな気持ちは非常に重要で、これは患者さん自身もそうですが、家族の皆様もそのような心持ちで支えていっていただくことが肝要なのだと思います。

 次回は、これまでにお見せしたような、通常では治癒は難しいと思われる状態から回復した事例に共通する要因をまとめたケリーターナー博士の書籍をご紹介します。

講座:こころとからだ〜がんは自分が作ったもの〜9

前回は、治療に対する積極的な姿勢と、癌の指標との関係について、ご紹介しました。
今回は、人のこころと身体を捉える上での考え方について、もう少し詳しくご説明します。


下の本は、ブルース。リプトンというアメリカの細胞生物学者の「思考のパワー」という著書です。
右の図は、パラダイム(ものの見方・考え方)の歴史的な変遷を示していますが、こちらは医療においても非常に重要な図であると言えます。



紀元前から西暦1700〜1800年頃までは、人々は、精神論的な思考・見方をしていました。宗教による意思統率はまさに精神論的なパラダイムと言えます。一方で、1776年の自然神論以降、1859年のダーウィンによる進化論のように、物質論的な思考・見方が強くなっていきます。最近でもヒトゲノム・プロジェクトなどは人を物質的な観点から定義づけてしまおうという考えのもとに遂行されました。
これらの結果、科学技術も飛躍的に発展し、急性の疾患や感染症などによる被害は劇的に減少し、我々は恩恵を受けたわけですが、何度も当ブログでも申していますように、癌や糖尿病といった慢性疾患は、何か一つの薬や、手術をすれば完治するというものではありません。そこで近年では、この物質論と精神論をバランスよく捉えることにより、からだとこころをコントロールしていこうという全体論(ホリズム)へと考え方・見方がシフトしてきているのだと思われます。



自分や家族、友人が病気になれば、我々は大きなショックを受けます。ですが、ショックを受けたとき、思い悩み、投げやりになるのではなく、少し広い視点で自分を捉え直し、今、自分は何をすればよいのか、自分は家族・友人に対して何ができるのか、を考えてみることが非常に重要と言えます。
その気持ち・考え方が、自然と治療に向かう姿勢になるのだと思いますし、そのお手伝いをしていきたいと私は日頃思っています。

次回は、症例のご紹介をしたいと思います。