講座:医食同源・あぶらの話8
今回は、牛乳に続いて、トランス脂肪酸という脂肪酸についてご紹介していきます。
トランス脂肪酸、一度は聞いたことがあるかもしれません。
このトランスという言葉は生化学の用語で、不飽和脂肪酸が持つ二重結合の型を表す言葉です。これまでこのブログでも、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類の脂肪酸があることを説明してきましたが、実は不飽和脂肪酸の大きな特徴である二重結合にはトランス型とシス型という2つの型があります。
自然界に存在する不飽和脂肪酸は圧倒的にシス型が多く、折れ曲がった形状をしています。一方で、トランス型は飽和脂肪酸と同じようにある意味強制的に直線的な形状になっています。
シス型の不飽和脂肪酸に水素を添加することで、トランス型の不飽和脂肪酸へと変化しますが、このような加工は、シス型を多く含む植物油などを固形状にして、バターのように使う上で、非常に役立ちます(バターの生産よりもコストが安く済みますよね)。
その一方で、身体への悪影響が数々報告されており、特にLDLコレステロールの増加により心疾患リスクを高めたり、プロスタグランディンの合成を阻害することにより癌を含むさまざまな慢性疾患リスクを高めることもわかっています。
このようなトランス脂肪酸の負の影響を懸念して、海外ではトランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国も増えていますが、上記のように多くの食品にトランス脂肪酸は含まれていますので、みなさんもぜひ脂肪酸の摂取の仕方についてはご注意いただければと思います。
次回は、オメガ3とオメガ6のバランスについてのお話をしていきます。
講座:医食同源・あぶらの話7
今回は、牛乳の癌との関係についてお話します。
牛乳はどうもからだに悪いことも多いようだということは、前回の記事からおわかりいただけたのではないかと思います。
乳癌と牛乳については、ジェーン・プラントの上記の著書が非常に参考になります。
こちらは有名なデータですが、牛乳を含む(ヨーグルトやチーズなどもそうですね)乳製品の消費量が多い国では乳癌発生率が高いとされています。
これは乳癌だけでなく、同じ卵巣癌や前立腺癌なども同様で、女性特有あるいは男性特有の癌との関係性が非常に高いと考えられています。
ではなぜそのようなことが起きるのでしょうか?
実は、乳製品には、乳由来の成長因子であるIGF(インスリン様成長因子)-1というものが含まれており、牛乳は人の母乳に比べ、5-10倍多く含まれています。ちなみにインスリンは良く糖尿病との関連で名前を聞く物質ですが、実は成長ホルモンとも変わらないくらい強い成長作用を持っています。
みなさんに、考えてみて欲しいのは、本来、このような成長因子が必要なのは、成長期のこどもであって、成長期を過ぎた大人はあまり必要としないことは自明の理だということです。
次回は、みなさん聞いたことがあるかもしれませんが、トランス脂肪酸というものについてご説明していきます。
レシピ本「和田屋のごはん」発売のお知らせ
いつもブログを見ていただきありがとうございます。
このたび「和田屋のごはん」というレシピ本を発売することになりました。
サンプルも以下のリンクからご覧いただけます。
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和田屋のごはんサンプル
このブログでもたびたび取り上げていますが、からすま和田クリニックで患者さんを診ていて、がんのメカニズムと食事との関係がいかに大きいかを痛感しております。毎日口にする食物で、生活習慣病やがんなどの予防・改善をと考えてこの本を作りました。食の基本を大切に、普段の食生活にこの内容をプラスしていただけたらと、思っておりますので、ぜひともご活用いただければと思います。
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- 発売日: 2014/10/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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また、京都烏丸御池にある町屋『和田屋』ではこの本を基に患者さん向けの料理のワークショップも開催いたしておりますので、ご興味のある方は下記までお問い合わせください。
〒604-0842 京都府京都市中京区西押小路町119番地
電話:075-223-3223 担当:樫(かたぎ)
京都市営地下鉄 烏丸御池駅下車 1番出口から徒歩3分
講座:医食同源・あぶらの話6
今回からは、少し話を変えまして牛乳になります。
牛乳はからだに良いというのは、もはや通説のように論じられていますが、特に癌や慢性疾患においては悪い側面もあるということをみなさまには知っておいていただきたいと思います。
上記は、その一例になりますが、例えばラクトフェリンは、ヒトT細胞白血病ヴィールスの感染を増強するという報告もあります。
ちなみに牛乳には多くの脂肪酸が含まれていますが、その組成は上記のように、非必須脂肪酸がほとんどです。
飽和脂肪酸が多い乳脂肪は、肉類の脂肪などと同様にアテローム性動脈硬化の一因ともなりますし、同時に癌の発生とも因果関係があるといえますので、特に癌や心臓病など慢性疾患のリスクを減らすためにもあまり大量の摂取は好ましくないと言えます。
もちろん牛乳には良いところもあって、牧草を食べて育つ牛の乳にはオメガ3系の脂肪酸も含まれていますので、そのような牛乳は摂取しても良いかもしれません。ですが現実的には上記にも書いてありますように、エゴマ油やアマニ油、果物サラダなどを摂ることで補うことをお勧めしたいと思っています。
次回は、このような牛乳と非常に関係が深い乳癌のお話です。
講座:医食同源・あぶらの話5
今回は前回に引き続き、必須脂肪酸であるオメガ3の有効性について紹介をしていきたいと思います。
まず癌とCOX-2(シクロオキシゲナーゼ2)という酵素の関係の説明になります。大腸癌の成長や転移において、COX-2の発現の関与が示唆されていますが、薬物ではこのCOX-2の抑制に有効なものはまだ出てきていません。
癌細胞などの炎症反応を解消する上で、炎症解消性脂肪メディエーターが重要な役割を担っていることがわかっており、このメディエーターを作るのがオメガ3系の脂肪酸であることがわかってきています。
このような例からもオメガ3系の脂肪酸を積極的に摂ることが癌細胞をはじめとした炎症反応の抑制に重要であることがおわかりいただけるのではないかと思います。
次回は、少し話を変えまして牛乳の話をしていきたいと思います。
看護師募集のお知らせ
当クリニックでは、現在、看護師の方を募集しております。
特に、がん治療に関心のある方や、一緒に勉強しながら治療を行っていきたいという方がいらっしゃいましたらぜひ「からすま和田クリニック 事務所」、TEL:075−223−3223 樫(カタギ)までご連絡ください。
【当クリニックのコンセプトについて】
本ブログでもご紹介させていただいておりますが、からすま和田クリニックでは、私が、肺がんを中心としたがん治療に40年近く携わってきて実感した、「自分や家族が受けたいがん治療」を実践しています。
現在一般的に行われているがんの三大療法(手術療法・化学・放射線療法)では、治療そのものが非常に苦しく、患者さんのQOL(生活の質)を著しく落としてしまうことが少なくありません。その結果、がんを乗り越えるための大切な体力が低下してしまうという残念なことになりかねないのです。
当クリニックでは、抗がん剤などを使ったがん治療を行うに当たって、(1)がんが住みにくい体質づくり、(2)免疫骨髄機能を高める、という二点を前提として治療をすすめます。(1)については、体を酸化させないことが重要です。(2)については、食生活の改善などを通してがんをおとなしくし、免疫力を活性化させます。その上で、QOLを保つことができる範囲内でゆるやかな抗がん剤治療を行っていきます。
そして大切なことは、患者さんが抱える悩みやがん治療に対する相談にじっくりと耳を傾けるという姿勢です。
からすま和田クリニックでは、「自分や家族が安心して受けられるような医療」「じっくりと話ができて、共にがんと闘っていけるような医療」を目指し、診察・治療を行っています。